予期せぬ事態が発生したのは、それから2週間程過ぎた時だった。私の携帯に早朝から何度も電話が入っている。U社長だと気づき、嫌な予感がした。「○○です。何かあったのですか?」慌てて折り返すと、いや〜と言う第一声。「実は、壊してみてわかったのですが、配管に少し問題がありまして。できれば一度現場に来て頂いてご相談したいのです」「配管」「問題」という2つの言葉にWパンチを食らったようだった。「まさか、お風呂が使えないとか、トイレが流れないとかじゃないですよね」「いや、そういうことでもないのですが、とにかく複雑な話なので早急に会いましょう」老朽化したマンションの最大の問題は配管だと言っていた。
[参考]
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そこがアウトなら、たそがれロンドンフラットどころではない。次の朝、時間より早く現場に行くと、すでにU社長は職人さんたちに何か指示を出し、彼らは困り果てた様子でその辺の片付けをしている。私が来たことに気付くと、U社長は見て下さいと、タイルを剥がした浴室の、むき出しになったコンクリート床を指差した。そこにはいくつかの配管が走っていた。「実は、順調に工事をやっていたのですが、配管から水を流したところ、3つの配管のうち、2つが流れないことがわかったのです。何年も使ってなかったというので、ワイヤーで中をガリガリやってみたのですが、おぼろげに何かがある。それで思い切って、その中の1つを途中まで切断して中を覗いたのです」その先を聞くのが怖くなった。「そしたら配管が腐食して向こうが見えない。で、こいつを床でトントン叩いてみたわけです。そしたら、どんぶり鉢一杯、山盛りのサビがふりかけのように出てきたのですよ」U社長は切断した配管を私に見せた。それは管というより円柱形の鉄クズのようにも見えた。管はところどころサビで厚くなったり、薄くなったりしている。「しかも見て下さい。どこにつながっていたのかわからないが、配管口が浴室床のあっちやこっちとニョキニョキ出ている。僕らはその全てに水が通るか確認したのですが、現在なんとか使えそうなのは、外壁の本管に一番近いこいつだけなのです」それはパクリと口を開けたコイのようでもあった。